HONMEMO

読書備忘録です。

ノンフィクション

ウーマンアローン/廣川まさき

第2回開高健ノンフィクション賞受賞作。著者がアマゾンならぬユーコン川を一人で下り、新田次郎「アラスカ物語」のゆかりの地、人を訪ねる旅行記。 冒険物語でもあるのだが、比較的あっさりしていて、そこが良いところでもあるのかもしれない。 アラスカ物語…

中国「反日デモ」の深層/福島香織

尖閣問題を契機とする中国での反日デモは、中国指導部による「動員」と言ってもよい側面も持つが、第2代農民工の格差問題などからくる不満の爆発という形でコントロールが効かなくなるという危険性を持つ。 しかし、デモをする方にも、許す当局側にも「反日…

紅の党/朝日新聞中国総局

習近平体制誕生までの経緯を薄熙来の失脚の内幕などを含めて取材したもの。 薄熙来は、重慶市書記として辣腕をふるうが、そのキャンペーンの一つ打黒というマフィア撲滅運動は、政敵排除の手段としても用いられ、文革にもなぞらえられているが、マフィアから…

マテイーニを探偵する/朽木ゆり子

マティーニの歴史や様々なエピソードを紹介する本。カクテルいろいろあれど、このような本が書かれるのはマティーニしかあるまい。 学生の頃、いろいろとカクテルを作ってみたことがあるが、甘いものが多くて結局マティーニ以外を作ることはなくなった。 究…

モサド・ファイル/マイケル・バー=ゾウハー

イスラエルの諜報機関モサドの事件ファイル。著者は、イスラエルのジャーナリストで、国会議員も務め、ベングリオン首相らの公式伝記も執筆したということ。 アイヒマンの探索・拉致、黒い九月やヒズボラなどのテロリストの暗殺など、いわゆるインテリジェン…

世にも奇妙な人体実験の歴史/トレヴァー・ノートン

医学、薬学研究が中心だが、これにとどまらず、広く人体実験、自己実験の事例を取材したもの。 コレラ菌に汚染されている可能性の高い水や、黄熱病患者のゲロ、寄生虫、プルトニウムを飲むとか、時におぞましい内容を含むのだが、ユーモア、ウィットに富む筆…

たった独りの引き揚げ隊/石村博子

本書は、旧ソ連で盛んだったサンボという格闘技で41連勝という記録を作り、わが国柔道・レスリング界にも影響を与えたというビクトル古河の評伝だが、本人が「人生の中で一番輝いていた」という北部満州ハイラルから日本へたった独りで引き揚げた1年半が中心…

おそめ/石井妙子

伝説の銀座マダムの一代記。 関係人物:大仏次郎、白洲次郎、川口松太郎、川端康成、俊藤浩滋、藤純子・・・ 「おそめ」その人の波乱の生涯それ自体もそうだが、著者のやわらかな文体とあいまって、問答無用で楽しめるノンフィクション。著者石井妙子は、NHK囲…

理系の子/ジュディ・ダットン

インテル国際学生科学フェアに挑む10人ほどの高校生たちを取材したノンフィクション。 研究の内容はそれほど詳しく説明されるわけではないので、中に研究内容としてすごいものなのかよくわからないものもあるが、参加者たちそれぞれのドラマは、なかなかに感…

世界屠畜紀行/内澤旬子

本書では、日本はもとより芝浦の屠畜場で働く人々が具体的にどのような差別を受けてきたかの記述は最小限にとどめている。差別を受けた側の立場に成り代わって被差別の歴史をくわしく書くよりも、まず屠畜という仕事のおもしろさをイラスト入りで視覚に訴え…

ザ・コールデスト・ウィンター 朝鮮戦争/デイヴィッド・ハルバースタム

絶大な人気と共和党保守派中国ロビーを背景に、皇帝のように振る舞い、毛沢東の中国との戦争を望むマッカーサーと、共産主義との対決のありうべき主戦場は欧州と考え、戦争を限定的にしたい、人気のないトルーマン大統領の確執を軸に、ウィロビー、ネド・ア…

無限の網/草間彌生

草間彌生の自伝。 強迫神経症(というのか?)を芸術に転化するエネルギーの凄まじさ。 前衛としての矜持。フリーセックスと反戦平和のロジックはよくわからないけれど、ヒッピー文化にこれほどまで大きな影響をもっていたことは知らなかった。 10年ほど前に…

キャパになれなかったカメラマン/平敷安常

著者は、米国ABCのTVカメラマン(フォトグラファー/フォトジャーナリスト)。キャパになれなかったカメラマンとは、自身のことを言っているのだが、本書は、著者のベトナム戦争を中心とした戦争カメラマンとしての活動の記録というよりも、ベトナム戦争にお…

台湾海峡一九四九/龍應台

著者は、台湾の文学者、文化大臣。日本統治下での戦争、日本の敗戦から国共内戦、49年の蒋介石の台湾への敗走という大動乱の時代を、著者の両親、親族の世代の人々(外省人、内省人など)はどう生きたか。ノンフィクションではあるが、イデオロギー的な考察…

人を殺すとはどういうことか/美達大和

2人を殺し、無期懲役で服役中の著者が、贖罪とは何かを考え続けたその記録。10人を超える服役囚についても、それぞれがその犯した罪にどう向き合っているかを聞き出しているが、反省の念が窺がえる人がほとんどいないという実態は、そういうものかと思いつつ…

トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか/羽根田治ほか

2009年夏、大雪山系トムラウシ山で、ツアー登山の18人が嵐の中遭難、8人が亡くなった事故(事件というべきか)の検証をしようという本。 遭難の経緯を追い、ツアー登山の問題点を指摘するほか、「気象遭難」「低体温症」「運動生理学」という章立てで専門家に…

幻の楽器 ヴィオラ・アルタ物語/平野真敏

HONZの激賞書評に乗せられて読んでみた。 楽しく読んだが、物足りない。まずはその音(演奏)を聞いてみたい。私にはビオラとバイオリンの音の区別もたぶんつかないだろうから、何をかいわんやではあるが。 幻の楽器 ヴィオラ・アルタ物語 (集英社新書)作者: …

あの戦争から遠く離れて/城戸久枝

中国残留孤児という言葉さえまだない頃に、苦労して帰国した父の苦難を中心に描く第1部、中国での父の(義理の)縁戚や友人たちとの暖かい交流、激しい反日感情に対するとまどい、残留孤児の国賠訴訟などを通して娘である私を中心に描く第2部。構成もすばらし…

地球最後の日のための種子/スーザン・ドウォーキン

ジーン・バンクの発展に貢献した植物学者ベント・スコウマンの伝記。伝記というより、遺伝資源をめぐる保護と利用の相克をめぐる世界的なダイナミックな動きを追ったノンフィクション。 スコウマンは、よく「種子が消えれば食べ物が消える。そして君も。」と…

スエズ運河を消せ/デヴィッド・フィッシャー

第二次大戦中、マジシャン、ジャスパー・マスケリンはイギリス軍に志願、カモフラージュ部隊を結成し、偽装作戦を企画して、北アフリカでロンメルに挑む。その作戦には、張り子の戦車なんかによる陽動作戦といったもののほかに、 アレクサンドリア港を移動さ…

空白の五マイル/角幡唯介

チベットの秘境ツァンポー峡谷、特にそのうち未踏査の五マイルの探検に魅せられた著者の冒険ノンフィクション。 特に2009年の3回目の冒険行は、08年のチベット暴動のあとの情勢変化もあって、アクシデントが多く、死の瀬戸際まで追い込まれる状況は、スリル…

私たちが子供だったころ、世界は戦争だった/サラ・ウォリス、スヴェトラーナ・パーマー

第二次世界大戦中に書かれた各国(ポーランド、ドイツ、ロシア(ソ連)、フランス、イギリス、アメリカ、日本)のティーン・エイジャーの日記を時系列に、また、一定のテーマに沿って編集したもの。 日記の内容は、それだけでそれぞれに胸を打つものだが、本…

ノーマン・ボーローグ/レオン・ヘッサー

いわゆる緑の革命の最大の功労者の伝記。 小麦、とうもろこしなどの品種改良だけでなく、政府、官僚組織との交渉、研究・普及の人材育成などに取り組み、メキシコ、インド、パキスタンなどの小麦、とうもろこしの生産量を飛躍的に拡大させた。飢餓に苦しむ数…

オオカミの護符/小倉美恵子

川崎市土橋は、今では東京のベッドタウン、閑静な住宅地だが、高度成長までは農地が広がっていた。著者はその土橋の農家の娘として育ち、御嶽神社の「オオカミの護符」を目にする。そこから、御嶽講というコミュニティーや、オオカミ信仰、山岳信仰などにつ…

日本の路地を旅する/上原善広

路地とは、被差別部落のこと。中上健次がそう呼んでいたからだという。部落出身の著者が、日本各地の路地を訪ねて、部落問題の今を問うというものでもあるのだが、一方で、著者のきわめて個人的な物語でもある。 糾弾的でもなく、淡々でもなくという本書のよ…

だまされて。/ポール・ミドラー

副題は、涙のメイド・イン・チャイナ。 米国輸入業者などと中国製造業者との仲介を行うコンサルタントである著者が見た、したたかな中国製造業者の生態。ほとんどギャグのようなエピソードばかりなのだけれど、笑うに笑えない。 だまされて。―涙のメイド・イ…

アルゴ/アントニオ・メンデス/マット・バグリオ

1979年イラン米国大使館占拠事件は、私が学生の頃の事件だが、このカナダ大使館に脱出していた米国大使館員の救出のことは全く覚えていない。しかも、ハリウッド映画のロケハン部隊に偽装して出国を図るとは、まさに小説よりも奇なり。こういう諜報機関が存…

破天/山際素男

副題は、インド仏教徒の頂点に立つ日本人。その人佐々井秀嶺のノンフィクション。インドで差別と闘う仏教の教導師だが、任侠道の親分のような感じが破天荒で面白い。胡散臭さも含めて。 結局、極めて政治的な運動になっていて、評価はいろいろあり得よう。佐…

外資系の流儀/佐藤智恵

自身のBCGの勤務経験や外資系企業社員・役員らへのインタビューによって、主として外資系企業に就職(転職)したい人に向けて、「外資系企業ってどんなところ?」を書いた本。そういうハウツー本的な意味で類書がゴロゴロしている気がしないでない。何かどこ…

風をつかまえた少年/ウィリアム・カムクワンバ/ブライアン・ミーラー

マラウィの平均的かやや裕福な(?)農家に生まれた少年カムクワンバ君。勉強をして農家の厳しい暮らしから抜け出したいという夢は、大飢饉で学費が払えなくなり、失われたように見えた。そんな中で図書館で見つけた本をヒントにガラクタを集めて発電のため…